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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)803号 決定 1957年4月23日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人今長高雄の上告趣意第一点について。

所論は、原判決の傷害の解釈を非難し大審院判例に違反すると主張する。しかし原判決が、刑法にいわゆる傷害とは、他人の身体に対する暴行によりその生活機能に障がいを与えることであって、あまねく健康状態を不良に変更した場合を含むものと解し、他人の身体に対する暴行により、その胸部に疼痛を生ぜしめたときは、たとい、外見的に皮下溢血、腫脹又は肋骨骨折等の打撲痕は認められないにしても、前示の趣旨において傷害を負わせたものと認めるのが相当であると判示したのは正当であって誤りはない。所論引用の各判例は、いずれも前示と同趣旨に帰する判断を示しているものであるから、判例違反というは全く当らない。所論は結局原審の正当にした証拠の取捨判断ないし事実認定を非難するに、判例違反の名をもってするにすぎず、採用のかぎりでない。

同二点について。

所論は、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らないのみならず、第一点について説示したとおり原判決の判断に誤りはない。

同第三点(原本に第二点とあるが誤記と認める)について。

所論は、判例違反をいうが、実質は、量刑不当を主張するにすぎない。そして原審の量刑に不当のかどはない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

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